ロトスコープとは、実写映像の一部分をトレースで抜き出し、アニメーションとして表現する技術のことです。
ただ単に写し絵をするというだけではなく、トレースのやり方次第ではさまざまな表現も可能です。
例えば、a-ha の「Take On Me」のPVのように、スケッチ風のアニメと実写が絶妙に混じりあった映像表現はおもしろいですよね。
最近のアニメでは、全編ロトスコープで制作された「惡の華」が話題になりました。
モーションキャプチャーした3DCGを思わせる人間らしい動きと、フリーハンドで描いた2Dらしいフラットなビジュアルが、なんともいえない世界観を作り上げています。
アニメーション映画でいうと、ディズニーの「白雪姫」は、秒間24コマもの作画によって、ねっとりと不気味な感じはするものの、リアリティ溢れる動きをします。
PC9801時代の人気ゲーム「プリンス オブ ペルシャ」も、まさにロトスコープらしい動きをしますね。
ロトスコープは、アニメーション制作での作画のサポート、または表現方法として、多くの作品の中で使われている技術です。
ちなみに、ポカリスエット・イオンウォーターの、プロモーション用ARの中に、人物のアニメーションがあるのですが、これにもロトスコープが使われています。
ロトスコープを使っているかどうかは、作品をパッと見ただけではわからないこともあるのですが、イオンウォーターのアニメーションに関しては、間違いなくロトスコープが使われていると断言できます。
なぜなら私が制作を担当させていただいたからです。
1秒間に20コマの作画で、20秒間動くアニメーションなので、合計400フレームをロトってます。
ちょっと宣伝になりますが、このARコンテンツは、ION WATER AR の専用サイト から無料アプリをダウンロードして、商品のラベルにスマートフォンをかざすと見ることができます。
気が向いたら、ぜひ試してみてください。
さて、ロトスコープで制作をする側の人間として、少し思うところを書いておこうと思います。
ロトスコープが考案されたのは、フィルム全盛期の時代です。
その頃は全てがアナログ作業なので、フィルムの実写映像を映写し、そこから一部分をトレースしてアニメーションを作るのは、かなり手間のかかる作業だったはずです。
また、大掛かりな機材も必要となるため、誰もが挑戦できるようなものでもなかったはずです。
ところが、デジタル全盛期の現在では、ウェブカメラの付いたノートパソコンが1台あれば、ロトスコープができます。
スマートフォンだけでも、一応できるでしょう。
時代の流れる速さはすさまじいもので、今となってはロトスコープによるアニメーションは、誰でもお手軽に制作できるようになりました。
そういう背景もあり、ロトスコープは、表現技法のひとつというだけではなく、アニメーションの勉強をしてみようという人にとっても、とても効果的な教材になると思います。
というのも、下絵となる実写映像がすでにある状態なので、絵が描けない人でも、トレースのみでアニメーションを作ることができます。
また、一定速度で切り出した静止画を一枚一枚トレースしなければならないので、重力や慣性の影響を受ける自然な動き、つまり人間らしい動きの連続性を理解しやすいです。
アニメーションを作ってみたいけれど、何から始めたらいいかわからないという人は、ぜひ!まずはロトスコープから入ってみてください。
アニメーションの連続した作画の仕組みについて、深く理解できることと思います。
慣れてくると、今度は表現方法として、さまざまな技法に発展させていくと、さらなるおもしろさも出てくるはずですよ!
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