一休さんの頓知話の中に、屏風に描かれた虎を退治するお話があります。
意地悪なお殿様が「屏風の中に描かれた虎を退治してくれ」と一休さんに無理難題を押し付けたところ、一休さんは「退治する準備ができたので、早く屏風の中から虎を出してください!」と見事な頓知を利かせる・・・というお話です。
このお話は、描いたものが絵の中から出てくるはずがないという前提があるからこそ成り立っています。
ところが、先日このお話と似たようなことが、現実に起きてしまいました。
私は、「だまし絵」というものを、ごくまれに描きます。
例えば、以下のようなものです。
これは壁に描いた絵なのですが、壁の中からカメが飛び出して来るようなことは、絶対にありえません。
もしも本当に絵が飛び出してくるのであれば、カレーライスをたくさん描いて、飛び出してくるカレーライスを無限に食べ続けます。
私はカレーライスが大好きなので・・・
もちろん、そんなびっくりサプライズは起こるはずありませんよね。
ところが、私のリアルイラストの師匠から、「だまし絵の“ツバメ”が、絵の中から飛び出してきて大空を飛んでいるぞ!」と、信じがたい連絡が来たのです。
そんなバカな!とはじめは思ったのですが、実際に送られてきた写真を見てビツクリしました。
これがもともとのだまし絵です。
もちろん立体感など無い、完全な平面です。
これを描いた数ヵ月後に、同じ場所を見に行ってみると・・・
なぜか巣が立体化しています。
ツバメも絵の中から飛び出してきて動いているような感じです。
まさか、本当に絵の中のツバメが飛び出してきた!?・・・なんてことはありませんが、だまし絵にだまされたツバメが、だまし絵と同じ場所に巣を作ってしまったといったところでしょうか。
ツバメは、以前巣があったところに、また巣を作る習性があるらしいので、このようなドジを踏んだのかもしれません。
だまし絵にだまされやすいツバメもいるんですね。
ひょっとすると、だまし絵と同じ場所にわざと巣を作って人間の目をだまそうとしているのか、だまし絵にだまされたふりをして、かわいらしさをアピールしているのか・・・いろいろと深読みしてしまいますが、とにかく微笑ましいエピソードです。
仲良く巣作り、がんばってくださいね!
事実は小説より奇なり! という言葉の意味も実感させられた、最近のちょっと変わった出来事でした。