ここ最近、ムービーを撮影する機会が増えていることから、新しい機材を購入することにしました。
いろいろと検討をした結果、今のところキヤノンのAPS-C機の中では、最も動画撮影に適していると思われる、EOS 60D に決めました。
今回購入した EOS 60D は、ダブルズームキットで、標準的なズームレンズと望遠ズームレンズが2本セットになっています。
私は既にこの2本のレンズは持っているのですが、キヤノンユーザーの知り合いにプレゼントしようと思い、お得なダブルズームキットでの購入となりました。
実は、この2本のキットレンズは少し前にリニューアルされ、名前の末尾に「II」が付いて、若干デザインが変更されました。
今回購入した 60D には、リニューアル後のレンズが同梱されていたので、私の手元には新旧のキットレンズ4本が勢ぞろいすることになったのです。
そこで、新旧のレンズを詳しく比較・観察できる今のうちに、いったいどのような部分がリニューアルされ、どちらのレンズのほうが良いのかを、私の個人的な感想などを交えながら見ていきたいと思います。
まずは、4本のレンズを並べてみます。
左から、「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS」「EF-S55-250mm F4-5.6 IS」「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II」「EF-S55-250mm F4-5.6 IS II」で、左の2本が旧型、右の2本が新型です。
新旧のレンズは、見た目のテイストが少し違いますが、光学系に変更はないそうです。
となると、そもそも何のためにリニューアルしたのかという疑問がわいてきますが、最近のキヤノンのレンズへのデザインの統一(全体的にブラックで統一されている)が理由かと思われます。
ただ、レンズをよく観察してみると、実はその他の理由もいくつか見えてきました。
ちなみに、今回比較してみたレンズは、あくまでも私の手元にあるレンズのみでの判断ということで、同じレンズでも個体差による違いが出る可能性もありますので念のため。
標準ズームレンズの比較
まずは標準ズームレンズから見てみましょう。
左が旧型で、右が新型です。
レンズを後玉の方(マウント部分)から覗いてみます。
旧型には「MADE IN JAPAN」、新型には「MADE IN TAIWAN」の刻印があります。
旧型は日本製で、新型は台湾製というわけですね。
EF-Sレンズの特徴でもある、カメラ本体を傷つけないための保護用のゴムリングが、旧型がグレーで新型がブラックになっているのも確認できます。
・・・と思いきや、実は新型の方はゴムリングが付いていません。
ただの一体成型のプラスチックになっていて、ゴムリングが省略されています。
これはパーツの数をできるだけ少なくすることで、製造工程でコスト削減をすることが目的でしょう。
次に鏡筒のデザインを比較してみます。
シルエットがわずかに異なっていますね。
旧型は少し角がとれた感じになっていますが、新型は角ばった感じになっています。
外観のカラーリングとプリント文字などを見てみます。
まず、EF-Sレンズの特徴でもあった、シルバーのズーム指標がブラックに変更されています。
プリント文字のカラーリングも、シルバーからホワイトに変更されています。
ついでにプリント文字のフォントも、細身のものから丸っこいものに変更されています。
細かい部分ですが、鏡筒先端のアルミのラインテープは、鏡面仕上げのものから、ヘライン仕上げのものへ変更されています。
さらによく見てみると、「AF/MFの切り替えスイッチ」と「ISのON/OFFスイッチ」の台座の部分が、旧型は別パーツとなっているのに対して、新型は鏡筒と一体成型になっています。
これはデザインのためというよりは、やはりパーツの数が少なくて済む分、製造工程でのコスト削減が目的のような気がします。
もう少し外観を観察してみます。
EF-Sレンズをカメラボディに取り付ける際の、レンズ取り付け指標も変更されています。
旧型は、白い四角の別パーツが接着されてあるのに対して、新型はただの白いプリントになっています。
これもデザインのためというよりは、製造工程でのコスト削減が目的でしょう。
欧州向けの信頼の基準となる「CEマーク」にも変化がありました。
旧型は目立たないグレーのプリントだったのに対して、新型はプラスチック成型での凹加工になっています。
旧型では、この部分のためだけにグレーのプリントが施されているので、よくよく考えてみると製造効率は良くないといえます。
これもデザインのためというよりは、製造工程でのコスト削減が目的でしょう。
他にも変更点はないかと探してみると、あと一箇所だけありました。
前玉から鏡筒内部を覗いたときに見える、小さなレンズの枠のデザインです。
新旧レンズで、光学系に変更はないということなので、レンズ部分は共通のものを使用していると思うのですが、なぜかレンズを固定している枠のパーツが違います。
個人的には旧型のデザインのほうが好きですが、よーく観察しないとわからない部分なので、機能的に同じであれば気にするほどのことではないと思います。
レンズの外観はわずかに変更されていますが、見た目の部分に関しては好みの問題なので、必ずしも旧型がダメで、新型が良いということはないです。
ただ、レンズの作りと操作感に関しては、はっきりと良し悪しが分かれます。
この部分を観察してみると、新旧のレンズに大きな違いが見られました。
まず、レンズの作りに関してですが、旧型のレンズの鏡筒には、ほとんどガタツキがありません。
18-55mmのレンズは、30mm付近でレンズの長さが最短になり、広角側の18mmと望遠側の55mmでレンズの長さが最長になるのですが、その全域で、ほとんどガタツキは気にならない程度です。
ところが、新型のレンズは最短の際にもガタツキが感じられ、最長の際にはさらにガタツキが大きくなります。
日本製と台湾製の違いによって現れる、パーツ成型の際の誤差なのかどうかはわかりませんが、鏡筒のデザイン変更の影響が少なからずあるのかもしれません。
ただし、ズームリングの操作感は、新型のほうがなめらかです。
EOS MOVIE を意識して調整が加えられたのかもしれませんが、新型のほうはムービー撮影時に安定したズーム操作ができるのに対して、旧型はズーム操作にスカスカ感がありすぎてひっかかります。
新型レンズの設計では、ズームリングの動きを滑らかにするために、仕方なく鏡筒にガタツキが出てしまうのでしょうか?
鏡筒のガタツキとズームの操作感に関連性があるのかどうかはわかりませんが、動画の撮影をメインに考えるなら、新型のほうが有利です。
最後に、新旧のレンズをカメラボディに装着して、いくつか試し撮りをして写真を比べてみましたが、描写に関しての違いは全く無いように思いました。
これは、光学系に変更はないとのことだったので、その通りの結果だと思います。
新旧2本のレンズを、独断と偏見で総合的に判断すると、外装の高級感は旧型のほうがあります。
これは、プリントされてあるフォントが細身でスタイリッシュなことに加え、インク色がシルバーであることがかなり影響しています。
新型のほうは、若干おもちゃっぽく見えるのですが、フォントが太めでインク色がホワイトなので、文字の視認性は高く、使いやすさはあると思います。
操作感に関しては新型のほうが良いのですが、鏡筒のガタツキを考慮すると、写真撮影のみなら旧型で、動画撮影が必要なら新型が良いと思いました。
光学系に変更はないものの、鏡筒の作りと操作感には若干の変更があったわけですね。
望遠ズームレンズの比較
次に望遠ズームレンズを見てみましょう。
左が旧型で、右が新型です。
レンズを後玉の方(マウント部分)から覗いてみます。
フォントに違いがありますが、旧型にも新型にも「MADE IN MALAYSIA」の刻印があります。
標準ズームレンズと同じく、新型の方では保護用のゴムリングが省略されて、プラスチックの一体成型となっています。
レンズ外観のデザインなどを見てみます。
望遠ズームレンズのほうは、鏡筒のデザインやスイッチの台座の部分など、パーツに関しては全く同じものが採用されています。
その他の部分の変更点に関しては、標準ズームレンズと共通です。
シルバーのズーム指標がブラックに変更され、文字のカラーリングとフォントが変更され、アルミのラインテープが変更され、レンズ取り付け指標が変更され、CEマークが変更されています。
前玉から鏡筒内部も覗いてみます。
こちらは、内部のレンズの台座も全く同じものでした。
光学系もパーツ類も変更は無いのですが、ズームリングをまわした時の感触が、新型のほうが重いです。
これは経年劣化によるものかもしれないので判断はしにくいのですが、やはりEOS MOVIE を意識して、トルク感を調整した結果なのかもしれません。
レンズをカメラに装着して、実際に機能面も比べてみたのですが、はっきりいって写りや使用感は全く同じものでした。
全く同じすぎて、イメージスタビライザーの負の特徴もきっちりと引き継いでいます。
どんな特徴かというと、商品撮影をする際に感じていたことなのですが、画角を決めた後にISが作動した場合、像が若干右下に移動してしまいます。
これは個体差によるものだと思っていたのですが、実はそうでもなさそうで、新型にも同じ現象が起こりました。
また、ISが動作する際に、微妙に(本当にわずかなものですが)音が聞こえるのですが、これも新型にも残っています。
ISの音に関しては、写真撮影の際には一切気にならないほど小さいのですが、外部マイクを使用しないで動画を撮影した際には、ばっちり録音されてしまいます。
つまり、旧型と新型は、外装も含めてほぼ同じものだと考えてよさそうです。
新旧の望遠ズームレンズを総合的に判断すると、標準レンズ以上に、どちらのレンズのほうが良いかという判断はつきにくいですね。
はっきり言ってしまえば、どちらも同じものです(笑)
比較してみて思ったこと
ダブルズームキットの2本のレンズをリニューアルした意味があるのかどうかと問われれば、あるような気もするし、ないような気もするのですが、今後のEF-Sレンズをブラックカラーで統一していくという方向性をはっきりと示したことことには意味があるような気もします。
また、特に標準ズームレンズに関しては、製造コストを下げることにも成功しているようなので、その分が製品価格にも影響してくれれば、ユーザーにとっては喜ばしいことです。
どのような理由で、EF-Sレンズのデザインの方向性を変えたいのかはわかりませんし、どうでもいいことなのですが、シルバーの帯が付いた現行のEF-Sレンズが、今後は順次リニューアルされていくのかもしれませんね。
「光学系に変更無し」の注意書き付きのレンズでなくて、防塵防滴構造や、F値の変わらないズームレンズなど、機能面が強化されたレンズの登場が楽しみです。
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私もまったく同じ状況で、手元に4本になりましたので
比較しましたがまったく同じ感想で。
コスト削減の努力の成果、新型を残すか、
日本製の旧型を残すか...迷いましたがズームリングの重さが新型がしっとりしてましたので、新型を残す事にしました。
本当はデザインは旧型のほうが好きだし、手持ちのEF-Sレンズともデザイン上は愛称がいいのですが。
良い記事でした。ありがとうございます。
どちらを残すかは難しい選択ですね。
サブ機の EOS Kiss のために、標準レンズは両方残しておくつもりですが、どちらかを選択しなければならいのなら、私も新型の方を残すと思います。
マイナーチェンジなだけに、改良ととるか改悪ととるかは人それぞれの考え方次第ですから、難しいところですね。
望遠ズームを検討していて新旧の比較が知りたかったので、すごく参考になりました。中古価格で数千円違うのですが、光学系に違いはないということで、私は断然旧型で良いと判断できました。
ありがとうございました!
生産コストは旧型の方が高いはずですから、新型の外観にこだわらなければ、旧型の方がお得ということになると思います。
ISがすごく効くし、価格からすると描写も優れている良いレンズですよね。