みなさんも既にご存知かと思いますが、ユニクロカレンダーのミニチュア風の動画が妙に気になってしまう今日この頃ですね。
UNIQLO CALENDAR
このミニチュア風の表現って、写真なら簡単な加工(Photoshopを使えばいいので)で表現できるのですが、動画の場合は結構大変です。
というのも、ティルト・シフトレンズという、一眼レフカメラで使用する建築物撮影用レンズが必要になるからです。
ティルト・シフトレンズとは、Canonではいわゆるアオリレンズと呼ばれるものですが、パースの歪みを補正したり、ぼかしの範囲を自由にコントロールできる変わり者で、非常に高価なレンズです。
つまり、ミニチュア風の動画撮影は、最低でも動画撮影機能付き一眼レフカメラとアオリレンズがセットで必要になってしまうため、到底お手軽に楽しむ事はできない撮影表現という事になってしまいます。
そこで、コンパクトデジカメの動画モードや、普通のムービーカメラや、動画付き一眼の標準レンズなどで撮影した動画でも、ミニチュアな感じを表現できないものかと思い、ちょっとしたサンプル動画を作ってみました。
今回のエントリーでは、このサンプル動画(今回の元映像は、CanonのEOS Kiss X3で撮影したものを使用しています)を元に、お手軽なミニチュア動画の作り方を解説してみたいと思います。
それでは、さっそく作ってみましょう。
と言いたいところですが、その前に、まずはユニクロカレンダーの動画が、どうしてミニチュア風に見えるのかを説明しておきたいと思います。
被写体がミニチュア風に見える仕組み
カメラのレンズには、それぞれに被写界深度というものあって、ピントの合う範囲が深かったり浅かったりします。
ここでは、絞りが開放である事を前提に話を進めますが、例えば、人物の撮影を行なう際、被写界深度の範囲内にある被写体にはピントが合い、それ以外のもの(前後のものや風景)がピンボケして見えるという事になります。
特に、ミニチュアのように近くにある物を撮影する場合は、非常に被写界深度が浅くなり、ある一箇所だけにピントが合います。
ところが、ある一定の距離以上離れた遠くの風景などを撮影する場合は、被写界深度に関係なく画面全体にピントが合います。
これはカメラのレンズだけではなく、人間の目も同じ仕組みになっているので、近くの物を見つめたり、遠くの風景を眺めたりしてみると、よくわかると思います。
これらの事からもわかるように、遠景を撮影した映像がミニチュア風に見える仕組みとしては、映像が遠景であるにもかかわらず、ある1箇所だけにピントが合っていれば、それは接写映像であると脳は判断してしまい、結果、その映像はミニチュアのように見えるというわけです。
ミニチュア風に見えるための加工方法
それでは、画面全体にピントの合った遠景の映像を、被写界深度の浅い映像にするには、どのようにすればよいのでしょうか。
例えば、どうにかして以下のように加工すればよいわけです。
横方向に遠近感のある映像の場合は、画面の両端がぼけた感じに加工します。
そうすると、以下のようになります。
または、以下のように加工します。
縦方向に遠近感のある映像の場合は、画面の上下がぼけた感じに加工します。
そうすると、以下のようになります。
といった感じですね。なんとなくミニチュア風に見えると思います。
遠景特有の空気の層を取り除くため、若干、コントラストも高めにするのがコツです。
動画の場合も、これと同じ加工をすればよいわけですが、もちろん静止画用の「Photoshop」は使えないので、それを、Adobeの「Premiere」というソフトウェアでなんとかしてみようというのが今回のポイントなのです。
ミニチュア風サンプルムービー
まずは、こちらがサンプルで作ってみたミニチュア動画です。
手持ち撮影なので、画面が揺れてますが気にしないでくださいね。
ミニチュア動画の制作方法
制作に必要なものは、遠景や、高い所から見下ろした風景を撮影した動画と、「Premiere」という動画編集用のソフトウェアです。
あらかじめ、以下のような、ぼかしの範囲を設定するためのマスク用の画像も準備しておきます。
それでは実際に作ってみましょう。
まずは、Premiereを起動させ、上下2つのレイヤーに同じ動画を入れ込みます。
上下のレイヤーに全く同じ動画が重なっている状態です。
次に、上のレイヤーに配置した動画に対して、「ビデオエフェクト」の中の「キーイング」から、「イメージマットキー」を適用します。
Premiereの場合は、いわゆる「マスク」の事を「マット」と呼んでいるので、エフェクトの中で「マット」と名前の付いているものは、「マスク」を使った表現という事になります。
赤枠のアイコンをクリックして、あらかじめ準備しておいたグラデーションの画像を読み込みます。
すると、上のレイヤーに配置した動画の上下が透明になります。
同じ動画が重なっているので、何も変わらないように見えますが、下のレイヤーを非表示にすると、以下のように、透明になった部分が黒く見えます。
下のレイヤーに配置した動画に「ブラー(ガウス)」を適用して、度合いを調整すると、以下のように、近景と遠景がピンボケしたような映像が出来上がります。
上下の両方の動画に、「ビデオエフェクト」の中の「色調補正」から、「プロセスアンプ」を適用します。
コントラストや彩度を、多少高めに設定するのがコツです。
若干、ミニチュア感が増したと思います。
最後に、上下の動画の再生速度を適当に上げてみます。
これにより、コマ撮り感が出るので、ミニチュア度が少しは増すと思います。
いかがだったでしょうか。
使い道の限定されているアオリレンズを購入するよりは、はるかにお手軽にミニチュア風動画が制作できると思います。
自力でミニチュア風動画を作ってみたいという方は、ぜひ挑戦してみて下さい。
ミニチュア動画を作りたいと思い、観覧させてもらいましたが、解らない部分があり質問なんですが、ぼかしの範囲を
設定する為のマスク用の画像を準備とありますが、どのように準備するのかが解りません。
Premiere Pro CS5はインストールしたのですが、ぼかし画像の作り方が解りません。
作り方を教えていただけないでしょうか。
はじめまして。
ご質問内容についての回答です。
> マスク用の画像を準備とありますが、どのように準備するのかが解りません。
マスク用の画像を準備するというのは、本文に表示してあるようなモノクロのグラデーション画像(これがマスク用の画像です)を作って、Premiereのプロジェクトファイルがあるフォルダ等と同じ場所に置き、いつでも読み込める状態にしておくという事です。
ちなみに、サイズが小さいですが、これがマスク用の画像ですね↓
https://yourcolor.up.seesaa.net/image/mini-mask.jpg
このままではただのグラデーション画像ですが、これを映像の上にマスクとして適用すると、黒い部分が透明になり、グレーの部分が半透明になり、白い部分は不透明のまま残る映像を作る事ができます。
こんな感じですね↓
https://yourcolor.up.seesaa.net/image/mini-ppr03.jpg
つまり、グラデーション具合でぼかしの範囲を自由にコントロールできるため、あらかじめ映像に合うようにグラデーションの範囲を考えておく必要があります。
> ぼかし画像の作り方が解りません。作り方を教えていただけないでしょうか。
グラデーション画像を作るには、Illustrator、Photoshop、Flash、Painter、SAIなど、グラフィック系のソフトがあれば、簡単に制作できます。
画像制作をする環境が無い場合には、上記のマスク用の画像をダウンロードして使ってみて下さい。
ただし、マスク用の画像はgatppajさんが作ろうと思っている映像サイズと同じサイズで作る必要があるため、ダウンロード後にサイズ変更をして下さい。
画像サイズを変更するだけでしたら、Windowsに付属の「ペイント」や、お手持ちの「プレミア」を使用してリサイズできます。
Premiereでのリサイズ方法は、作成したい映像サイズでプロジェクトファイルを作成後、タイムライン上にグラデーション画像を配置し、画面サイズと同じになるように画像を拡大させてください。
その後、フレームの書き出しから、JPEGなどの画像ファイルとして書き出せばOKです。
あとは本文と同じやり方でマスクを適用させれば、上下が透明になる映像を作る事ができると思います。
パソコンはネットサーフィンしかしていない分際ですので
まだ回答に対しても理解しきれていませんが、この回答を
参考にしながら挑んでみます!
出来ましたらその旨は伝えますので時間を下さい。
がんばってみます。
Premiere Elements 10を使ってこちらの手順をやってみたのですがイメージマットキーを適用した段階で動画が真っ黒になってしまいます。
ぼかし画像はとりあえずこのページにある画像を使ってやってみたのですが画像の形式など決まりはありますか?
私のお気に入りはこれです。
http://youtu.be/CQNYXQUPqUI
これも、同じようにして作っているんでしょうね。
Premiere Elementsを使ったことが無いのですが、以下のアドビのヘルプページを見ると、メージマットキーは問題なく使えそうですね。
サンプルの画像を見る限りでは、ミニチュア風もできるはずです。
http://help.adobe.com/ja_JP/premiereelements/using/WS4B8135DA-083C-42eb-B09E-65070ECBC889.html#WSB8CADC6B-F700-4e6d-A331-DAE949B09784
問題は、画面が真っ黒になるという現象ですが・・・理由はよくわかりません。
画像の保存形式にも特に決まりは無く、JPEGやPNGなどの一般的なものでしたら何でもOKです。
ただ、記事内のグラデーション画像はサイズが小さいので、フルHD画質で編集する際は、グラデーション画像のサイズを1920×1080ピクセルに拡大して、個別に保存したものを読み込まないといといけませんが、それは問題なかったでしょうか?
現時点では、サイズの問題ぐらいしか思いつかないですね・・・
リンク先のものは、完成度の高い動画ですね。
きちんとした作り方をしているというか、ティルトシフトレンズを使用して、ボケを調整しながら動画を撮影しているようです。
本来のミニチュア風動画の作り方といえます。
この記事で解説している内容は、ティルトシフトレンズを使わず、編集だけでなんとかしようというものなので、なんちゃってな方法なのです。
作り方は、実はまったく違っていたりするわけです。